メディアコンバータ(Media Converter)とは、異なる素材や方式の伝送媒体を接続する際に、信号変換を行う接続装置のことで、「メディコン」や「MC」と呼ばれることもあります。
ここでは、メディアコンバータの役割や特徴から選び方までわかりやすく解説します。
<目次> 1.メディアコンバータとは? メディアコンバータの役割 メディアコンバータのメリット 2.メディアコンバータの選び方 ①伝送速度 ②光ファイバ種、コネクタ形状 ③心数 ④伝送距離 3.メディアコンバータの機能 4.メディアコンバータの使用例 5.あとがき
メディアコンバータとは?
メディアコンバータ(Media Converter)とは、2種類の異なる媒体を接続する際に、信号変換を行うネットワーク機器のことで、「メディコン」や「MC」と呼ばれることもあります。
具体的には、電気信号を光信号に変換するものを指すことが多く、主に伝送距離の延長を目的として利用されます。
1991年よりメディアコンバータの開発を開始し、今や国内シェアNo.1企業※である大電が解説します。
※富士キメラ総研「コミュニケーション関連マーケティング調査総覧2021」による
メディアコンバータの役割
メディアコンバータの役割は大きく3つあります。
- 伝送距離の延長
UTPケーブルによる伝送は最長で100mまでですが、メディアコンバータで光信号に変換することで、
100m~百数十kmまで伝送距離を延長できます。
- メディアタイプ、光モード(MMF/SMF)、心数変換
メディアコンバータには、電気⇔光(メタル⇔光)変換のものと、光⇔光変換のものがあります。
光⇔光変換タイプなら、光モードや心数の変換が可能です。
・UTPケーブル⇔光ファイバ
・MMF(マルチモードファイバ)⇔SMF(シングルモードファイバ)
・1心⇔2心
- 落雷・ノイズ対策
UTPケーブルはメタル(銅)のため、設備からのノイズや雷の影響を受けてしまいます。光ファイバを利用することで、雷やノイズの影響を回避できます。
メディアコンバータのメリット
メディアコンバータを使用するメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。
■安価に光ファイバを利用した長距離伝送ができる
■責任分界点ができる
メディアコンバータの選び方
ここからは、メディアコンバータを選定するときの4つの切り口について解説します。
機器選定ソフトも用意していますので、大まかな条件を把握している場合はぜひご利用ください。
- 伝送速度
まずは、100M・1000M(1G)・10Gなど、どの速度に対応した機器と接続する必要があるのかを確認しましょう。
速度の速いものを選んでおけば安心というわけではなく、100Mの機器と1Gのメディアコンバータでは通信できませんので注意が必要です。
メディアコンバータには、速度変換を行わない「リピータタイプ」と、速度変換が可能な「ブリッジタイプ(スイッチタイプ)」があります。
◼️リピータタイプ
UTPケーブル側と光ファイバー側の通信速度が同じ場合に使用します。受け取った信号をそのまま通すため、VLANのタグ付きパケットやジャンボフレームも伝送し、パケット長の制約もありません。
また、エラーチェック等の機能がないため、遅延時間が極めて小さく、伝送遅延が許されない環境に最適です。
◼️ブリッジタイプ
UTPケーブル側と光ファイバー側の通信速度が異なる場合に使用します。速度変換が可能ですので、将来的に接続機器を更新し通信速度が変更になった際でも、そのまま利用できます。
送受信データを監視しているため、エラーパケットは破棄しますが、リピータタイプと比べると伝送遅延が発生します。 - 光ファイバ種、コネクタ形状
現在一般的に使用されている光ファイバは、内部を伝搬する光の経路(モード)によって「シングルモード」と「マルチモード」に分けられます。
◼️SMF(シングルモードファイバ)
光の伝送路が1つのみのファイバです。光を伝搬するコアと呼ばれる部分が9~10μmと小さく、伝送損失が小さいことから長距離伝送に適しています。
標準的なSMFのゼロ分散波長は1.3μm帯にありますが、伝送損失がより低い1.55μm帯にゼロ分散波長があるファイバを特に「DSF」といいます。
◼️MMF(マルチモードファイバ)
光の伝送経路が複数あるファイバのことです。コア径が50μmまたは62.5μmと大きく、SMFと比較すると伝送損失が大きいことからLANなどの短~中距離通信に適しています。マルチモードは更にGI型(グレード・インデックス)とSI型(ステップ・インデックス)に分類されますが、現在使用されているマルチモードファイバのほとんどはGI型です。
光ファイバの種類と併せて、コネクタの形状も確認しましょう。大電のメディアコンバータラインアップには、「SCコネクタ」と「LCコネクタ(SFPタイプ)」対応のものがあります。コネクタ形状が異なる際には、変換コネクタを利用すれば接続が可能です。
SCコネクタ LCコネクタ(SFP/SFP+)
- 心数
心数(芯数)とは、簡単に言うと「通信に光ファイバを何本利用するか」ということです。
◼️1心(1芯)
1本の光ファイバで送受信を行います。送信と受信で異なる波長を利用することで双方向通信を実現していますので、製品型番の異なる機器同士を対向で接続する必要があります。
大電の製品を例にすると、1.31μmの波長を送信する「DN2800WSG3E」と、1.55μmの波長を送信する「DN2800WSG5E」の組合せなどです。
<メリット>
・光ファイバ1本で送受信が行える。ダークファイバを利用する場合にはコストが抑えられる。
<デメリット>
・異なる製品型番を対向接続するため、予備機をそれぞれ準備する必要がある。
◼️2心(2芯)
送信と受信でそれぞれ1本ずつ、合計2本の光ファイバの利用して通信を行います。送信と受信で波長を変える必要がないため、同じ製品同士を対向接続します。
<メリット>
・同じ型番同士を接続するので、予備機は1種類で良い。
<デメリット>
・光ファイバを2本利用する必要がある。
- 伝送距離
メディアコンバータを利用することによって伝送距離を延長できますが、伝送したい距離によって製品型番や適切なSFPモジュールが異なります。
製品ページや仕様書には「目安伝送距離」と「光許容損失値」を記載していますが、伝送距離はあくまでも目安です。実際の伝送距離は光許容損失値に依存しますので、伝送路の許容損失値を確認する必要があります。
測定が難しい場合は、無償で検証機をご用意していますのでぜひご利用ください。
<目安伝送距離の算出方法>
大電では下記の基準に基づき伝送距離を算出しています。
・1.31μmの場合・・・パワーバジェット(光許容損失)≧0.4×伝送距離+3dB(システムマージン)
・1.55μmの場合・・・パワーバジェット(光許容損失)≧0.25×伝送距離+3dB(システムマージン)
メディアコンバータには、光伝送部にトランシーバが搭載されているものと、SFPと組み合わせて使用するものがあります。光トランシーバが搭載されているものは、伝送距離や心数によってメディアコンバータの型が異なりますので、これまで解説した4つの切り口を確認してメディアコンバータの型番を選定しましょう。
SFPタイプのものは、メディアコンバータ本体ではなく搭載するSFPによって伝送距離や心数を変えることができます。4つの切り口からSFPの型番を選定しましょう。
メディアコンバータの機能
メディアコンバーターには、以下のような機能を備えている製品があります。設置環境や用途に応じて、必要な機能が搭載されている製品を選びましょう。
◼️リンク連動(LPT)機能
UTPまたは光ポートがリンクダウンした場合に、対向側のポートもリンクダウンさせる機能です。これにより、対向側のSW-HUBなどで障害を検知できます。
◼️リモート監視機能
管理パケット(OAM)のやり取りによって、光対向側メディアコンバータの設定状態や動作状態、リンク状態を監視する機能です。状態はローカル側機器のLEDで確認することができます。
◼️ループバック機能
光側へテストパケットを伝送することにより、伝送路に異常がないか確認する機能です。試験結果はローカル側機器のLEDで表示されます。
メディアコンバータの使用例
◼️企業内LAN
企業の本社と工場・各支店などを接続するために、メディアコンバータでメディアを変換し、光ファイバを利用して長距離伝送を行います。
◼️監視システム
店舗や道路、河川の側に設置されている監視カメラの映像を、監視棟に伝送するためにメディアコンバータが利用されます。
オプション製品
メディアコンバータの一括監視が可能な収納シャーシや、DC電源下で使用するためのアダプタなど、オプション製品もラインアップしています。使用環境に応じて、組み合わせてご利用ください。
メディアコンバータ
収納シャーシ
SFP/SFP+
DINレール
固定用金具
DC電源アダプタ
あとがき
簡単にまとめると、メディアコンバータとは2種類の異なる媒体を接続する際に、信号変換を行うネットワーク機器で、主に伝送距離の延長のために利用されます。製品選定の際には4つの切り口をご確認くださいね。
製品の仕様に関する疑問や、製品選定でお困りごとがございましたら、お手伝いさせていだたきますので、問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください!