WDM(波長分割多重)とは、「Wavelength Division Multiplexing」の頭文字をとったもので、1本のファイバに波長の異なる複数の光信号を多重して伝送する通信技術です。
ここでは、波長多重伝送の基本からCWDMとDWDMの違いまで、分かりやすく解説します。
<目次> 1.WDMとは? 伝送の仕組み メリットとデメリット 2.CWDMとDWDMの違い CWDMとは DWDMとは 比較まとめ 3.WDMの活用例 4.あとがき
WDMとは?
WDM(波長分割多重)とは、1本のファイバに波長の異なる複数の光信号を多重して伝送する通信技術です。「Wavelength Division Multiplexing」の頭文字をとったもので、大容量の通信を実現します。
通常は回線の数だけファイバを用意する必要がありますが、WDMの技術を利用すれば、1本のファイバだけで複数のファイバを用意した場合と同じ通信が行えるようになります。
伝送の仕組み
MUXフィルター(合波器)で波長の異なる複数の光信号を合波し、一本の光ファイバで伝送します。届いた光信号はDEMUXフィルター(分波器)で合波前の各波長に分波され、デバイスまで伝送されます。異なる波長は互いに干渉しないため、このような多重伝送を実現できます。
MUX/DEMUXフィルターはパッシブな製品なので、外部からの電源は不要です。
光モジュールの発光パワーでは足りないような長距離伝送を行う場合には、伝送路内にアンプを設置し、光信号の増幅を行います。
メリットとデメリット
メリット
- 光ファイバの節約
1本のファイバで複数回線を伝送できるため、ファイバの敷設やダークファイバの契約費用などのコストを大幅に削減できます。既存のファイバを活用して、後から回線数を増やすことも可能です。 - 超長距離伝送
DWDMの波長帯はアンプに対応しているため、光の信号を増幅することで100km以上の超長距離伝送が可能です。
デメリット
- ロスが発生
MUX/DEMUXフィルタを通るたびにロスが発生するため、回線毎にファイバを用意する場合と比べると伝送距離は短くなってしまいます。
CWDMとDWDMの違い
WDMには、ITU-Tが定めた規格として「CWDM」と「DWDM」の2つがあります。ここからは両者の違いについて説明します。
CWDMとは
CWDMとは「Coarse Wavelength Division Multiplexing」の頭文字をとったもので、「Coarse(粗い)」とある通り、低密度のWDMです。
1271nmから1611nmを20nm間隔で分割した18波長で構成され、この中でも光透過率が高く伝送損失の少ない、CバンドとLバンドがよく利用されます。
波長間隔が20nmと比較的広いのが特徴で、DWDMと比較すると安価に多重伝送が可能です。
DWDMとは
DWDMとは「Dense Wavelength Division Multiplexing」の頭文字をとったもので、「dense(密集)」とある通り、WDMの技術を高密度にしたものです。
前述した光透過率の高いCバンド・Lバンド(1525~1610nm)の波長を、より細かく分割して伝送します。
波長で間隔が定められていたCWDMとは異なり、DWDMは光の周波数で間隔が定められます。
193.1[THz]を中心に 12.5GHz、25GHz、50GHz、100GHz間隔の周波数で規定され、100GHzの場合は約0.8nm間隔で40波長程度、50GHzの場合は約0.4nm間隔で80波長程度をとることができ、最大100波以上の多重も可能です。
アンプで増幅しやすい帯域を利用していることから長距離伝送に向いていますが、波長を細かく分割する精度が求められるため、CWDMと比較するとコストは高くなる傾向にあります。
比較まとめ
CWDMとDWDMを比較すると以下のようになります。
DWDMの方が狭い波長間隔のため、波長やファイバを有効活用できますが、その分コストが高くなります。
多重したい回線数や伝送距離に応じて、適切な方を選択しましょう。
CWDM | DWDM | |
---|---|---|
使用波長帯域 | 広い (1270~1610nm) | 狭い (1525~1610nm) |
チャネル間隔 | 広い (20nm) | 狭い (1.6~0.4nm) |
チャネル数 | 少ない (最大18ch) | 多い (最大160ch) |
伝送距離 | ~約160km | 160km以上 (アンプ使用) |
コスト | 安い | 高い |
WDMの活用例
WDMは、敷設に莫大な費用と時間がかかる光海底ケーブルのために開発された技術でしたが、近年はネットワークトラフィックの増大に対処する技術として注目されています。都市間を結ぶコアネットワークや、地域内を結ぶメトロネットワークだけでなく、各家庭や企業へ繋がるアクセスネットワークにおいても活用されています。
データセンタ間、企業のビル間接続
通信事業者のバックボーン
あとがき
今回は、WDM伝送について解説しました。
弊社でもCWDM・DWDMに対応した製品をラインアップしていますので、ネットワーク構築に関してご不明点がございましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください!